Poster Abstracts


P01
活動銀河中心核の金属量から探る銀河と巨大ブラックホールの共進化
  松岡 健太 (愛媛大学)
銀河と巨大ブラックホールの共進化は現代天文学において最も解決すべき問題の一つである。我々はこの問題を解き明かすために活動銀河中心核(AGN)の光度とその金属量の間に見られる相関(AGN光度−金属量関係)に着目した。AGNの光 度は銀河中心の巨大ブラックホールの質量やガス降着に依存するため、巨大ブ ラックホールの形成・進化を反映している。一方で、金属量は母銀河の星形成に 依存するため銀河形成・進化を辿るのに適した指標である。今回、我々はSloan Digital Sky Survey(SDSS)のクェーサースペクトルを用いてブラックホール質 量−金属量関係、エディントン比−金属量関係を調査した。その結果、AGN光度 −金属量関係の起源としてブラックホール質量−金属量関係がより支配的である という結果を得た。しかしながら、今回の研究結果は高光度クェーサーしか対象 になっていないため、数密度が極めて小さい例外的な天体しか調べることができ ていない。これは普遍的な巨大ブラックホールの描像に迫ることができていない ことを意味している。そこで、本研究会ではHyper-SuprimeCamによるAGNサーベ イ(SWANS)によって得られることが期待される低光度クェーサーサンプルを用 いたAGN金属量の調査の必要性について議論する。


P02
SXDS領域におけるX線選択の活動銀河中心核探査
  秋山 正幸 (東北大学)科
SXDS領域で見つかった X 線源の可視赤外 追求観測により隠された活動銀河中心核の探査を行い、降着に よる巨大ブラックホールの成長のうち、塵によって隠された成 分がどのくらいあるのかを調べている。特に遠方宇宙において 隠された種族がどの程度存在するのかについて制限を付けるこ とが重要である。このポスターではこれまでの結果をまとめ、 どの程度の制限がついたのかについて言及する。


P03
z~1における比星形成率の環境依存性
  井手上 祐子 (愛媛大学)
現在までの様々な研究から、宇宙が始まってから星生成率密度はz~3に向かい増加し、z~1-3でピークになり、z~0に向かい減少していることが分かっている。このことから、星生成史に急激な変化が起こっていると考えられるz~1で何が起こっているのかを知ることは銀河進化を理解する上で重要である。 我々のグループでは、すでにCOSMOSプロジェクトの一環として、すばる望遠鏡のSuprime-Camを用いた狭帯域フィルターの観測から、2平方度という広い領域において3000個以上のz~1.2の[OII] 輝線銀河を選び出すことに成功し(Takahashi et al. 2007, ApJS, 172, 456)、星形成活動の環境依存性の調査などを行ってきた (Ideue et al. 2009, ApJ, 700, 971)。その結果z~1では高密度領域で星形成活動は活発であるということが分かった。これは、z~0で知られている高密度領域で星形成活動が不活発になるという傾向とは異なり、銀河進化を考える上で非常に興味深い結果である。 今回は、z~0とz~1の間で、このような傾向の違いがどのような原因で起こっているのかを探るために、銀河の進化フェイズの指標となる、銀河の星質量に対する星形成率の比(比星形成率)と銀河環境の関係を調べた。その結果、比星形成率はほとんど環境に依存しないことがわかった。この結果はz~0とは異なる傾向である。本講演では、特に銀河進化における環境依存性に焦点を当て結果の解釈を議論する。また、HSCを用いた当該研究の展望についても触れたい。


P04
COSMOS20 に基づく高赤方偏移星生成銀河探査
  塩谷 泰広 (愛媛大学)
COSMOS20 はすばる望遠鏡の主焦点カメラを用いて COSMOS 二平方度の領域を撮像観測したもので、広帯域フィルター6枚に加えて、中帯域フィルター12枚(IA427 から IA827 まで)を用いていることが特徴である。多くの中帯域フィルターを用いていることによって測光赤方偏移の精度が向上し、ライマンα輝線天体と同じ赤方偏移範囲のライマンブレーク銀河を選びだすことができる。今回われわれはそのようにして選出したライマンα輝線天体とライマンブレーク銀河の関係を報告する。


P05
COMICSによるアウトバースト直後のホームズ彗星の中間赤外線観測
  大坪 貴文 (ISAS/JAXA)
ホームズ彗星(17P/Holmes)は2007年10月25日、17等だった明るさが2等台へと急上昇するという未曾有のアウトバーストを起こした。バースト直後の光度上昇を担う主成分は彗星塵であり、我々はバースト時の観測チームおよびハワイ観測所長の了解のもとCOMICSを用いてバースト1〜数日後のホームズ彗星中心部付近の撮像および分光観測を行った。その結果、核近傍から次第に遠ざかる一群の塵雲の運動を捉え、また木星族であるホームズ彗星の塵にかなりの量の結晶質シリケイトが含まれることを明らかにした。分裂彗星やバースト彗星の観測に、すばる+COMICSの性能・機動性・観測自由度が十分に威力を発揮する結果となった。


P06
AB Aur の20ミクロン帯撮像観測
  本田 充彦 (神奈川大学)
すばるCOMICSを用いて、Herbig Ae/Be 型星 AB Aur の星周円盤の波長24.5um, 18.8um での撮像観測を行った。その結果星周円盤の熱放射の広がりをとらえることに成功した。複数波長での広がりサイズの比較から、この円盤におけるダスト温度分布の半径依存性や、8m望遠鏡で空間分解できる原始惑星系円盤の特徴について議論する。


P07
COMICSバージョンアップ提案
  Fujiyoshi Takuya (Subaru Telescope)
COMICSの機能を改良・追加しさらなる成果をもたらすために、 1)偏光観測機能:この2年ほどでようやく製作可能になった CdS/CdSeによるアクロマート半波長板を用いた偏光観測機能を 追加、 2)Qバンド低分散機能:20ミクロン帯全域をカバーするフィルタと 低分散回折格子のインストールで低分散を実現、 3)窓交換機構の改良による観測効率アップ、 の三つを検討している。これらの検討状況と新しく開ける観測 可能性について発表する。


P08
すばる主焦点カメラ撮像データアーカイブ化進捗状況
  日下部 展彦 (国立天文台)
すばる望遠鏡は良質のデータを量産しており、その徹底的な活用が求められる。現在行われている生データの公開に加え、品質保証つきの一次処理済みのデータアーカイブも期待されている。特に、他の8m級望遠鏡にない広視野撮像を可能にしている主焦点カメラのデータに対する要求は、国内外を問わずきわめて強い。 そのため、現在、多波長で重要な観測が集中しているLockman Holeのデータ処理およびそのカタログ化を進めている。本発表ではこの領域におけるカタログデータの進捗状況を報告する。


P09
すばる共同利用Q&A
  竹田 洋一 (国立天文台)
すばる望遠鏡共同利用(プロポーザルの準備から申請、さらには採択されて観測に赴くまで)に関して、特にユーザーが疑問に思うこと、知りたいであろうこと、共同利用係から特に留意してほしいこと、について質疑応答の形式でまとめる。