<第33回大型光学赤外線望遠鏡専門委員会議事録>
日時:2000年10月12日11時〜16時(日本時間)
場所:国立天文台解析研究棟すばるTV会議室(TV会議利用)
出席者:安藤、家(司会)、市川隆、太田、岡村、郷田、小林、田村(幹事)、
林、舞原、
(その他の出席者:臼田、山下、布施、R. Kudritzki, B. McLaren, R. Wainscoat)
都合により議題案順序の交換があった。以下は(ほぼ)時系列の議事録。
0. 前回議事録確認(家、資料33-0)
1. ハワイ大学IFAの新しい所長(Kudritzki)の挨拶。
2. すばる望遠鏡プログラム委員会の報告(岡村、資料33-3b)
2.1. 9月18日にハワイ観測所で行われたプロ小についての報告。最初に公募
経過報告があり、ついで、採択方針の審議を行った。夜数の調整を行うこと、
同じ内容のプロポーザルのマージはしないこと、分野別配分はプロポーザル数
あるいは要求夜数に比例して配分すること、外国枠は10%以下が妥当である
こと、レフェリーの点数化はABCのランク分けに応じて3,2,1点を配分するこ
と、レフェリーと申請者の重複によりレフェリーが3名になったケースが5課
題あったが、それ以外は4名以上であり、実質上問題にならないことを確認し、
GTプログラムと共同利用の観測対象の重複の問題、申請者への送付コメント
について議論した。審査の結果、応募114件中、採択された課題数はIRCSが
16件20夜、Suprime-Camが10件16夜である。今後の課題と次回の公募に際
しての観測所への要望についても議論した。
3. 共同利用スケジュール、その他の議論(林、資料33-3a)
3.1. S01A期の共同利用のスケジュールの見通しが示された。
3.2. レフェリーがGTに入っている場合、共同利用提案の審査を依頼すること
の是非について議論があった。
3.3. 共同利用開始前のUH時間になされた観測の研究成果について、
2000年12月の一部共同利用開始に先立つ立ち上げ期になされた試験観測
については日本側ではすばる関係者が論文投稿前に原稿を見る機会を設け、内容に
貢献できる場合は主著者の判断で共著者に加えるられるように配慮している。
12月までのUH時間についてなされたさ観測についても同様の措置を考慮して
欲しいとの要望が委員長から表明された。UH側からは速やかな出版が望ましく、
論文内容への貢献度によるとの問題点が指摘された。観測前に合意書のような
ものを作るのが良いとの議論があり、唐牛氏から草案が提示された。最低限、
UH側は観測内容を観測所・装置側に事前に周知するように努力する。
ことになった。
4. S01共同利用について(安藤、資料33-4)
4.1. 望遠鏡保守時間確保のために、共同利用時間と観測所時間を以前議論した
値より減らしたいとの希望が観測所より提案された。主鏡固定点の恒久対策と
主鏡再蒸着のためにそれぞれ一ヶ月が必要となることがその主な原因。S01A期
の共同利用夜数は36夜の予定。
4.2. S01A期には、OHS/CISCO, IRCS, FOCAS, HDSが共同利用に供される。
4.3. UH側および国内の委員から、次期にSuprime-Camが共同利用に出ない理由
について質問があった。CCD素子の交換、主焦点交換のオーバーヘッド、
サポート体制を考慮して、観測所が行った決断であるが、Suprime-Camへの
利用希望度は高いため、次期に利用できないことへの失望感が見られた。
4.4 (関連して、Suprime-Cam の運用について、全体の共同利用枠と、UHの
試験観測使用枠とでバランスをとった運用をして欲しいとの要望が国内の
委員からあった。=> このまま英訳しても分からないので・・
共同利用開始前のSuprime-Cam のUH時間としての使われ方については、
日本人研究者の間に不公平感があったことが委員から指摘された。
5. ハワイ大学・JACとの協力
5.1. ハワイ大学2.2m望遠鏡に関する国立天文台とハワイ大学の協力について
(田村、資料33-5a)
日本およびハワイの天文学者のために、国立天文台が2.2m望遠鏡時間のある
割合(10-15%程度)を2001年2月開始を目標に確保する交渉が進んでいる。
その概要は、期間は当面2年でその延長・条件はフレキシブル、年間運用費
のある割合に寄与する、国立天文台側で独立な望遠鏡時間割り振りプロセス
を持つ、現在および将来の全てのUH望遠鏡側装置が使用可能、日本側の装置
持ち込みとそのサポートを行う、旅費・宿泊費は国立天文台が負担すること、
など。すばるを目指した装置・サイエンスの育成が主目的なので、約1/3は
持ち込み装置時間、約1/3をすばる観測所時間、約1/3をサイエンスに基づく
通常の望遠鏡時間としたい。望遠鏡時間割り当て委員会はなるべく身軽なもの
とする。光赤外委員会等でこの件については、日本のコミュニティーに広く知
らせ、理解を得る。
5.2. UKIRT観測時間の利用について(関口、資料33-5b)
日本の分担に応じたUKIRT観測時間を確保し、日本の研究者に供する交渉を
進めている。5年間に最高100夜、2001年8月からのセメスターからの予定。
具体的合意については、過去のマックスプランクのtip/tilt副鏡における協力
に関する合意が参考になるだろう。
6. ハワイ観測所概況報告(安藤、資料33-1a)
6.1. 6月以降の進捗についての概要。第一期観測装置の試験観測が継続。AO
は現在望遠鏡への取り付け中で、10月下旬にファーストライトを目指す。第一
回共同利用の公募には114件もの申請があった。共同利用の受け入れ体制を固
めつつある。
6.2. 運用:望遠鏡・装置担当の2種類のオペレータを養成。山頂の安全管理の
徹底。
6.3. 人員:サポートサイエンティストは2名就職・3名募集中。オペレータは
2名募集中で8人体制を目指す。ラボ・テクニシャンは1名辞職、1名募集中。
6.4. 経費関連:第一期装置は保守部品と機能追加。第二期装置のうち、FMOS
は計画第一年次の手当て、その他はR&D。望遠鏡とソフトの保守・機能追加。
6.5. マウナケア所長会議・利用者委員会:Master Planが6月に決定した。MK
Management BoardとMK Management Officeから成る。後者は4人で、現在
permanent directorを募集中。前者はボランティア7名から成る。3名がハワ
イアン。第一回会議を持ち、subcommitteeと次回開催日を決定した。この会議
はオープンである。McLarenによるすばるへの示唆は、会議に出席することと
天文学者の活動の成果をより広い範囲に広がるようにbenefitの共有感が
重要とのこと。
6.6. 望遠鏡報告(臼田、資料33-1c)
6.6.1. 6,7月にSuprime-Camで主焦点立ち上げ試験を行い、基本性能を確認
した。残る課題もある。
6.6.2. 焦点の自動温度補償機能を光学カセグレン副鏡・主焦点で行い、機能を
確認した。
6.6.3. FOCASによるカセグレン焦点ADCの機能確認を行った。
6.6.4. 望遠鏡操作端末TWS1および2のリプレースを8月下旬に行った。
6.6.5. オートガイダーの引き込み高速化を8月に行い、収束が90秒から5秒
になった。未改善項目もまだある。
6.6.6. 主鏡のCO2クリーニングを約3週間に一度行っている。反射率の変化も
モニターしている。
6.6.7. 望遠鏡の現状不具合の項目整理を行なった。
6.7. 装置報告(山下、資料33-1b)
6.7.1. Suprime-Cam
共同利用に向けて、MITの2個のCCDを追加予定。イオンポンプの恒久取り
付けと遠隔操作化。星像やポインティングの目処はたってきた。
6.7.2. IRCS
第1回目の機能試験観測後、修正・新フィルターのインストールを山麓で実
施した。補償光学と組み合わせ試験を山麓で行った。第2回機能試験(9月)
により、ようやくソフトウエアは透過モードではなく、観測制御システム(SOSS)
からの制御になりつつある。Grism/Echelleの基本的観測データが取得できた。
6.7.3. FOCAS
撮像とロングスリット分光機能は確認。システム効率・限界等級は未定。マ
ルチスリット分光も、0.3"精度でスリット上に載せられるようになった。MIT
CCDへの交換時期は未定。
6.7.4. OHS
バックグラウンドを覆いにより低減した。性能試験観測は9夜実施。CISCO
は、観測所時間・ハワイ大学時間に多く使用されている。
6.7.5. HDS
3月末に可視ナスミス焦点に設置。7,8月に赤用・青用イメージローテータ有
りの場合の基本的性能を確認した。0.4"スリットでR=10万の波長分解能を達
成した。
6.7.6. COMICS
撮像と低分散分光の機能試験は終了した。室内実験で残像効果は低減できた。
中分散分光でのフリンジの問題があり、検討中。
6.7.7. CIAO
第1回目試験観測で問題となったコリメータ支持・ゴースト問題を解決した。
10月の第2回試験観測でもこれを確認。山麓で補償光学との組み合わせ試験を
終了。10月、1月のAO機能試験に協力する。
6.7.8. AO
山麓での最終調整・IRCS/CIAOとの組み合わせ試験等を行い、9月29日に山
頂搬入。10月末のファーストライトを目指す。
6.8. 広報(布施、資料33-6)
共同利用観測により得られた成果の広報活動への利用について、広報室を通
して積極的に発表を進める方針。PIに対して協力を依頼する予定。広報室側も
画像を綺麗にするなどの手伝いをする。
7.すばる等 ハワイ観測所の施設による成果のacknowledgementについて(林、
資料3-10)
7.1 いくつかの観測所の例をサーベイした後、"Based [in part] on data at
Subaru Telescope, which is operated by the National Astronomical
Observatory of Japan."をタイトルのfootnoteに付ける案などが提示された。
意見交換の後、最終案は観測所で決めることとした。
IRCSを使用したときはUHへのacknowledgementも必要かどうかUH側の
意向を確認する。装置へのacknowledgementも考えられるが、その装置の
文献の引用などで考慮するのが良いだろう。
7.2 また、UH側にデータ占有期間は観測後18ヶ月とするというすばるのデータ
アーカイブの方針を説明し、UH側にも同調を求め、了解を得た。
8. 京大望遠鏡構想について(太田、資料33-2)
岡山将来計画の一環。口径3m、15億円規模の予算。西日本の大学が連携す
る。広島大学・岡山大学などが装置も担当。主目的は、突発的天体とAstro-F
のフォローアップ。岡山で行われていた共同利用も続ける。可視の視野は1度、
赤外は5分角。まずは可視光ファイバー分光器を用意する。平成14年度概算要
求。京大の他施設とも協議中。
9. 計算機関連(水本、口頭報告)
ヒロ計算機リプレースについて。DASHの簡易版について、および三鷹の解析
環境整備について報告があった。
10. ポストすばる計画について(家、資料33-9)
ポストすばる計画については、リードタイムが長いが、国際協力による推進
が重要となることが見込まれ、光干渉計、超大型地上望遠鏡、スペース望遠鏡
などについて幅広く検討開始し、具体化する必要があることが指摘された。
11. 研究会、その他
11.1. ジェミニ・すばる研究会「Astrophysical Ages and Time Scales」(関口、
資料33-7)2001年2月5-9日ヒロにて開催。
11.2. すばるユーザーズミーティング(山田、資料33-8) 2000年3月7-9
日ヒロにて。プログラム等の素案の提示があった。
11.3. SIRIUS(田村、資料33-11)
1024x1024HgCdTeアレイを3基搭載した、3色同時赤外線カメラSIRIUSが、8
月10日にハワイ大学2.2m望遠鏡にてファーストライトに成功し、ほぼ仕様ど
おりの性能であることを確認した。今後は主に名大が南アフリカに新設した
1.4m望遠鏡(IRSF)に搭載されるが、来年以降再びハワイに持ち込み、装置時
間だけでなく、ハワイ大学・日本の研究者と協力した観測を同望遠鏡で行うこ
とを計画している。
以上