<第38回すばる望遠鏡専門委員会議事録(案)>
日時:2002年12月25日 10:30〜16:30(日本時間)
場所:国立天文台解析棟すばるTV会議室(TV会議利用)
出席者:安藤、家(委員長)、市川伸一、市川隆、岡村、片坐、唐牛、杉山、
田村(幹事)、仲野、野口邦男、舞原
オブザーバー:鈴木文二(三郷工技高)、畠 浩二、五島正光(一部のみ)
<報告>
1.第37-34回専門委員会議事録確認(家、資料38-1)
資料参照。
2.国立天文台をめぐる状況について(家)
法人化に伴う諸問題、特に新研究機構法人下でのCOE的研究組織と共同利
用研としてのユーザーインターフェース機能の確保、スペース天文学への参画、
若手養成教育への参画などの懸案、および本専門委員会の法人化後の位置づけ
の見通し、などについてコメントがあった。
3.ハワイ観測所関連報告報告
3.1.ハワイ観測所報告(唐牛、資料38-2a)
(マウナケア及び国際関係)UKIRTとの共同研究協定を締結し、望遠鏡へのア
クセスを確保した。マウナケア利用者委員会関連事項としては、Keck Outrigger
望遠鏡の難航と、すばる望遠鏡への調停官による情報公開命令があった。
FMOS協定書締結に向けての合意ができたが、詳細は今後の交渉で決める。
FMOSの利用時間の決まり方及びその割合の根拠について意見交換があった。
(予算等)天文台予算ボードとの最終調整はH14年度26.4億円で妥結した。
この関係で開発小委員会には2千万円の配分しかできなかった。今後のすばる
関連の予算要求で、新規事業を施設運営費と別に希望するのは難しいと認識。
(新責任体制の進展)Science Operation Divisionを強化し、旧所長室スペースを
Operation Center室とした。SSチームの充実とリーダーシップ体制を整えた。
SSは二装置を担当できるように訓練する。Operatorの勤務体制を見直し、
Night Operation Assistant採用を計画している。Day Crewを6-8人体制にす
るために新規採用計画を進めている。装置引渡の体制作りを行っている。
3.2.望遠鏡概況報告(臼田、資料38-2b)
1. 結像性能は概ね問題なし。
2. ポインティング・トラッキング・ガイド性能も概ね問題なし。主焦点では
Azレール補正が不調。Ns焦点でもAzレール補正テーブルを準備中。M3のたわ
みが大きい(系外惑星のドップラー法等に影響あり)ので、現在対策検討中。
3. 赤外副鏡のchopping性能は出たが、tip/tilt性能はあまり改善していない。
4. 観測効率改善をTSC-OBSステータス更新タイミング改良やOBSのTSCコマン
ドの改善で図った。AG引き込み時間を短縮した。
5. 鏡の反射率の劣化を見込み03年夏に再蒸着を行うスケジュールを立てている。
3.3.観測装置状況報告(山下、資料38-2c)
AO: 概ね安定運用。夜光輝線カットフィルターの導入。WFSのAPDの交換
予備が無くなり新規APDを使用するための別マウントが必要になった。
CIAO: 概ね安定運用。S03A期より偏光モードを公開。検出器の交換の予定有り。
分光・分光偏光のアップグレードを計画。
COMICS: 読出し・制御システムの改良・更新で観測効率が向上。観測準備用
アプレットを準備中。1時間程度のダウンタイムがあった(アレイ読出し
ボードトラブル)。約1年ほどの小改良を計画している。
FOCAS: 電源トラブルがあったが、比較的安定運用中。偏光機能の試験観測
を実施した。MOS観測の需要が増大している。
HDS: 安定運用中。
IRCS: 安定運用中。分光器側の検出器をアップグレード予定。熱カットフィル
ターに劣化があるかもしれない。
OHS/CISCO: 安定運用中であったが、11月にfilter wheelが故障し1夜ダウン。
原因不明のまま復旧した。
SuprimeCam: メシアVへのアップグレードを行い、読み出し時間が半減(約2
分から1分以内へ)。安定運用中であったが、11月にフィルター交換機構
のトラブルで1.5夜ダウン。
諸装置引渡しについては、トラブルとメンテの切り分け等が重要。
担当を交代した。
3.4.補償光学高度化計画(高見、資料38-2d)
科研費特別推進経費に基づきスタートした。38素子から188素子への増加と
レーザーガイド星システムの装備。2004年にハワイへ持ち込む。3人のポス
ドクに加えて、さらにRCUHスタッフ数名を確保しつつある。
4.すばるユーザーズミーティング報告(今西、資料38-3)
約120名の参加者を得て、12月19-20日に三鷹で開催された。ポスターも約
45件。議論時間の確保、世話人の増加と意思疎通などの課題がある。ハワイで行
うことに関しては賛否両論有り。日本側が参加意識を持つためには専門TV会議
オペレータ等が必要だろう。すばる東アジアレクチャー開催の構想がある。
5.共同利用状況(山田、資料38-4)
a. S02B 公募結果報告
通常枠は193件(約448夜)申し込み中、38件(74夜)採択(TOO含む)。
国際枠は3件4夜。インテンシブ枠は4件申し込み中、採択1件(10夜)。
b. S03A 公募状況報告
通常枠は10月31日に締め切り、195件の応募。装置別ではSCam, IRCS,
FOCASが多く、HDS,COMICSがこれに次ぐ。またAOが増えた。
インテンシブ枠は11月15日に締め切り、10件の応募。サービス枠は10月
31日に締め切り、19件の応募。
c. 電子投稿について
部分的電子投稿を開始した。トラブルはあったが、対応可能だった。今後も
継続する。完全電子投稿にするにはレフェリーとのやり取りの完全電子化などが
必須。レフェリーにアンケートなどが必要か。
d. サービス観測について
Suprime-Cam、CISCO撮像、COMICS撮像を合わせて最大5夜。所内では
いろいろ議論があったが、希望は多い。応募はメール。TACで採点する。
6.S03Aインテンシブヒアリング報告(家、資料38-5)
前回に続けて委員の出席率が低かった(専門委員12名中3名、TAC委員
9名中5名)。事前評価も含めて19名中11名が採点。新規に、各申請に海外専
門家2名にレフェリー評価を依頼し、13名から報告が有った。1件ごとの絶対
評価で依頼したが、複数提案の相対評価で依頼すべきであった。提案としては
良い提案が複数あった。
S03A枠は10夜しかないが、採択済みで履行できなかったものの扱いを含め
工夫が必要。観測所時間からの補填、観測所プロジェクトとの関係、などを
整理して判断する必要がある。
7.ハワイ大学2.2m、UKIRT(田村、資料38-6)
標記事業の運用については、これまではすばる専門委員会扱いで進んでいたが、
今後は光赤外専門委員会扱いとなる。報告は当委員会でも引き継ぐ。過去2年
間でのUH望遠鏡への持ち込み装置の実績は、SIRIUS(名大・天文台、責任者:
田村)、LIPS(東北大、責任者:関)、Kyoto3DII(京大、責任者:菅井)であっ
た。光赤外専門委員会からの答申も受け、TACメンバーを交代した。旅費予算
は天文台で確保。望遠鏡費用は天文台光赤外の事業として天文台予算ボードに
別途申請している。予算削減のため赤字となっている。当委員会としても
この事業をサポートすることで同意。
8.将来計画検討について(家、資料38-7)
光赤外天文学将来検討会(仮称)を立ち上げた。体制(サイエンス班・地上
望遠鏡班・スペース望遠鏡班)を整備し検討を進め、具体的概念設計案を1年
後を目処にとりまとめることを目標とする。
9.TAC報告(舞原、資料38-13)
現在のTACは9名構成。S02A-S03Bまでの採択作業。分野・カテゴリの分
類方法を変更。カテゴリ分けに1日、採択作業に2日。レフェリーの数が不足
し始めて来たのが深刻な問題。
<審議>
1.すばる観測装置のレビュー(AOとFMOS以外全装置の資料有り、38-8)
各共同利用装置の完成度をレビューし、今後の改良課題とその支援策を観測
所に答申することを目的とし、(仮)資料を提出してもらった。今回は簡単に
各装置の現状概要と予算も含めた希望などを聞き、次回以降総合的なレビュー
を継続する。
2.今後のすばる望遠鏡の運用方針について(家、資料38-9)
まず、一般枠については当初の目的である、なるべく多くの人にすばるの
利用を経験してもらうという観点からこれまで1課題3夜以下としたが、
最近はユーザからのこの枠を外す希望が強い。一方、S02Aからは大プロジ
ェクト(2年間30夜程度)とインテンシブ(1年間10夜以内)を導入して
いる。これらをどのように切り分け、評価するかの議論を行った。このすばる
運用の全体戦略については外部専門家による評価をいづれ行うのが望ましい。
観測所プロジェクト枠によるすばるグループとしての取り組みと大型共同
利用枠の関係を整理し直す必要がある。論文題目やアブストラクトに
"Subaru"や装置名を引用するキャンペーンを徹底したい。
望遠鏡時間を戦略的に外国の観測所の装置時間等とバーターする可能性に
ついても今後検討を進める必要がある。また、教育・広報活動の支援の進め
方の位置づけについても検討が必要である。
S04までについては、夜数枠が採択了承されているが、第二期装置等への
装置時間の配分の必要性などもあり、見直しの必要がある。
具体案はTAC及び共同利用で立てるが、一般枠の3夜上限を緩和する
報告でS03Bから試行することについて合意が得られた。
S03Aのインテンシブの採択については、S02Bで観測所時間とのやりくり
を行う際の問題、悪天候の場合の取り扱い、審査方法など枠組みについて
検討を要する事項が多く、意見交換があった。
関連してS03Aに予定の再蒸着についても観測所の慎重な判断を求める
意見があった。
3.すばるの教育利用について(鈴木、畠、大島、資料38-10)
日本ハンズオンユニバース協会から、すばるの教育利用に関する具体的希
望として、高校生枠の設置、教育用天体のサービス観測、ライブカメラの設
置などいくつかの希望が提案された。意義等について委員で意見交換を行い、
可能なものについては観測所等で検討する。教材用観測については希望リス
トの作成が必要。
4.次期専門委員会候補(家、資料38-11)
任期は平成15年3月1日〜16年3月31日の予定。専門委員会規則を確認、
議論の結果、以下の候補者を運協委員長に推薦することを了承した。
台外(6名):岩室、岡村、谷口、舞原、片ざ、比田井、仲野、土居
台内(6名):家、山田、臼田、有本、出口、千葉、常田、渡部J
ExOfficio :唐牛、野口K、市川S
5.今期専門委員会活動の総括・申し送り事項(家)
活動報告案(資料38-12)に本日の議事内容を付加した案を持ち回りで
委員に諮り今期の活動報告をとりまとめることとした。
次回は2003年3月に新旧合同委員会を開催予定。
以上